2013年7月10日水曜日

「自転車の教科書」を読む

今話題の書籍「自転車の教科書」(堂城 賢 著)を読んだ。
ついで言うと、YouTubeにも著者が札幌のサイクルショップで講師した「やまめの座学」がupされていたので、それも見た上での感想です。といって、まだスポーツサイクルに乗り始めて1年にも満たない某の感想なので、それなりです。


先ず書物の内容を掻い摘んで紹介します。

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得てして大概の人はフツーに自転車に乗れるので、教科書的なものを読んだことがない。実際私もない。しかし、静止状態では不安て極まりなく、また地球上で最も効率のよい乗り物ともいわれる自転車は、ちゃんと乗らないとその真価を発揮できないと作者は言う。

この本は、それまでの骨盤を立てて猫背で‥というフォームではなく骨盤を前傾さたライディングフォームの解説本である。

骨盤を前傾させると必然的に背筋をピンと伸ばすことになる点も所謂ラクダのコブと異なり、やまめ乗りと名付けられている。やまめ乗りならばちゃんと自転車に乗ることができるという訳。

本ではやまめ乗りのメリットとその理由やどうしたら骨盤を前傾させ背筋をピンと伸ばしたライティングフォームにできるか?が主として書かれている。

骨盤を前傾させる。→前脚に荷重移動し後脚は荷重ゼロとなる(する)→クランクは常に正回転する→夢の永久機関

ただそれだけを解説したといえばそれだけである。(汗
因みに、骨盤を後傾させると例のラクダのコブのライディングフォームになって、後ろ足に荷重がのこり、強いてはそれが正回転を妨げる力となって自らに跳ね返ってくる(ので、宜しくないとの説明)

さらに、その骨盤を前傾して背筋を伸ばした状態で手の荷重を抜くと足のもっと回転は上がる(「三点支持は面白い-見えないの荷重移動」参照)のだが、手の荷重をあまり掛けないで骨盤前傾+背筋を伸ばした姿勢を保つには、体幹を鍛える必要がある(ことは体感的経験的に誰でも理解できると思う)

そこで、先ずは自転車に乗る前に体幹を鍛える必要性を説いている。

また、ある年齢から時間経過と共に体力が衰えるのは必然だが、体力の衰えは身体の柔軟性でもって対処しようということも説いている。


まとめると以下のようになる

やまめ乗りとは、骨盤前傾+背筋を伸ばすライディングフォームで、其れにより前脚にのみ荷重する夢の永久機関を実現する。ただし、その実現には体幹を鍛えることと柔軟性を養い保つことが必然である。

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さて、読んでYouTubeを見た感想。

筆者はもともとMTBのプロの選手であったこともあり、また裏付けする例もいちいち挙げているので読んでいると成る程成る程となりました。(この点は単なるショップのオヤジの書物と異なりますね)

そして実際、YouTubeをみるとよくわかるのだが、筆者は大変身体が柔らかい。まるで新体操の選手のようだ。(子供の時から身体が硬いのを自覚しているので大変羨ましい(汗) やまめ乗りを完全にマスターするにはこの体の柔軟性が必須だと思われる。

新城選手やカンチェラーラの様に背中が真っ直ぐのライディングフォームの人が今後は増えていくだろうと。その時にやまめ乗りが評価されるだろうとの話でした。

では、何故に今までは猫背のライディングフォームが良しとされてきたのか? そして今後はやまめ乗りが主流となっていくと言うのか? ここからはシロートの推測にすぎないが、それは自転車の進化進行と大いに関係があるのではないだろうか?

オートバイの話で恐縮だが、ハングオフという車体からコーナーの内側に腰を落として膝を路面にこすりつけるコーナリングフォームが有名だ。



ハングオフをWGPの世界で一般化させたのはヨーロッパ主体のWGPにやってきたアメリカン=Kenny Robertsだ。彼は3連覇を成してキング・ケニーと呼ばれている。そして昨今のライディングフォームでは膝ばかりではなく肘までも路面にこすりつけるフォームが目に付くようになってきた。ケニー以前はリーンウイズと呼ばれる車体の傾きに身体をあわせるフォームが一般的だったが、それがハングオフに、そして肘摺りへと移り変わってきている。



そのライディングフォームの移り変わりの鍵となるがバイクの進化だ。もっと言うとタイヤの進化が大きいと思われる。

つまり、自転車もオートバイ同様、機材の進化によってライディングフォームは変化して当然と言えるのではないだろうか?

猫背フォームのときはクロモリフレーム主でトルクを掛けるペダリングだった。フレーム素材はアルミからカーボンが主となって、ランス以降ケイデンス主体のペダリングへと移ったので、ライディングフォームも変わっていくのではないだろうか?と思う。(途中にビンディングペダルの登場も見逃せないポイントだな) また、サガンの様なMTB出身のロードレーサーも増えてきているというのも無視できないだろう。

筆者の堂城 賢氏は元MTBのプロ選手だ。「自転車の教科書」の後半ではバランスの取り方(「やまめの宿題」左右どちらでもケンケンができるように!― 等)にページがさかれているが、それはロードよりも悪路を走行するMTBならでは当然のことだ。身体が柔らかいのもMTB選手故かもしれない。やまめ乗りとは、MTB選手がロードに乗ったらこうなったというフォームのなのかもしれない。

先のハングオフにしても、最初は異端と思われていたが3連覇すると誰もそんなことを言わなくなった。自転車のライディングフォームもやまめ乗りの選手が第一線で活躍すればソレが一般的に受け入れられてくると思う(し、筆者はそうなると言っている)





最後に一言。

どの世界でも発言の内容ではなく誰が発言したか?が重視される。

エンゾ氏の言う"ラクダのコブ"は過去の選手のフォームのコピー故ある意味説得力があるとは言え、いち自転車ショップのオヤジよりも元選手の発言のほうがより重みをもって受け入れられるのは必然である。

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